豊田市美術館「ジャコメッティ」展で見たもの

こんにちは、コジです。豊田市美術館で開催中の「ジャコメッティ」展に行ってきました。

ジャコメッティって誰?

恥ずかしながら、私、彫刻にそれほど興味がなかったこともあって、アルベルト・ジャコメッティ(1901~1966年)という人を全然知りませんでした。

彼は、イタリア語圏のスイスに生まれ、後にパリに移住して、それからずっとモンパルナス界隈のアトリエで制作を続けました。細く長く薄くそぎ落とされた人物の彫刻を制作し、戦後の彫刻史に確固たる地位を獲得しています。

見えるものを見えるままに」つくることを追い求めた先に、その独特の引き伸ばされたような形になったとのこと。

私も今回、豊田市美術館でジャコメッティの大きな回顧展が開かれるというチラシを見て、自分がこの細長い像の前に実際に立ったらどんなことを思うんだろうと興味が沸き、行ってみることにしました。

豊田市美術館の庭

11月末の平日、晴れた日でしたが、人でごった返す人気の展覧会とは趣が違い、豊田市美術館はとても静かで、空気も澄んでいました。豊田の駅から徒歩で15分ほどかかり、たどりつくのに少し苦労するものの、あの丘の上の美術館はとても気持ちよくて、毎回「ちょっと面倒でも行ってよかった」と思う場所です。

そういうわけで今までにも何度か行ってはいるものの、夏や冬の真っ盛りの時期だったこともあって、私はこの美術館の庭へまともに出たことがありませんでした。いつもそのままこの裏の入り口から入っていたんですね。

でも、11月の寒さぐらいならまだ許せる範囲ですし、とにかく天気がよくて気持ちよかったので、ちょっと庭を散策してみました。

そうしたら、予想以上によかったんです!

紅葉の時期ということもあってか、木々が色づき、その中に作品がうまいぐあいに配置されていました。さすが美術館だけあって素敵だなぁ~と感動。

 

少し進むと、今度は水辺が見えてきます。丸い泡を浮かせた池に空と雲が映っていて、奥に美術館の建物が見えます。

そして、坂を少し下ると正面玄関に着きます。正面玄関がさりげないので、一瞬どこから入るんだろうと思っちゃいますが、ジャコメッティの看板の右側に入り口がありました。

会場へレッツラゴー!

さて、ロッカーに荷物を預けたら会場へ向かいます。今回の順路は3階がスタートとのことで、まずはエレベーターで3階へ。

初期のキュビズムやシュールレアリズムの影響を受けた時代の作品から見始めるわけですが、私は「女=スプーン」というスプーンを女性に見立てた作品が気に入りました。スプーンの柄のところが上半身、すくうところが下半身になっているんですが、オートクチュールのドレスを着ているかのように美しい線で、特におなかのあたりの丸みがきれいでした。

大体何でも実物を見ないとわからないことがたくさんありますが、彫刻も、やっぱり当然ながら実物を見ないとだめですね。ネットで写真を見たときにはわからなかったことを、会場でいろいろ発見できました。

もう少し時代が進むと、ごつごつした表面の細長い立像というスタイルが確立されてきます。

 

このタイプの作品については、爪楊枝大のものから何メートルもあるものまで、大きさはいろいろでしたが、複雑なポーズをとっているものは一つもなく、真っ直ぐ立っているか、一歩歩き出しているかぐらいでした。

行く前は、この像を目の前にしたらかなり違和感があるんだろうなと思っていたんですが、実際は、「おーっ、確かにこう見えるかも」と思いました。でも、何だか遠くにいる感じです。匿名性が高まるのかなと思ったんですが、それでも一人一人違う人だと感じました。

印象的だったのは大きな足で、伸びて高さを持った体を補って支えるように、また進行方向をはっきり示すかのように、アヒルの口のような形の大きな足がついていました。

しかし、女性の胸がほぼ横に広がって垂れ下がり、お尻も下がり気味だったのはなぜなんだろう。モデルを前にしてではなく、記憶から制作していたようなので、そういう女性像が頭にあったのかなと思います。

細い人たちが何人も並んでいるゾーンは壮観でした。ある時期、ジャコメッティは同じ骨組みから何体もの作品をつくったそうで、一つ納得できる形ができると一度その型をとり、またそこから次の納得できる像に成形し、もう一つ型をとるというふうにして、たくさんの像をつくったということでした。「ヴェネツィアの女」という一連の作品がそうだったんですが、全部違うのに統一感があるような気がしたのは、そのためなのかもしれません。

この展覧会で、ジャコメッティという人は、破天荒な芸術家ではなくて、几帳面な職人肌の人だったんじゃないかという気がしました。それは、ドローイングの顔や目への異様なまでの細かい描写や、モデルを何時間も同じポーズで拘束したというエピソードなどからもうかがい知れます。

職人肌の人が珍しくいつもと違う作品をつくったものという意味で言えば、今回の展示の中では特に犬と猫が際立っていました。ジャコメッティは動物をあまりつくらなかったそうですが、この犬と猫はとてもおもしろいものでした。

このは、中国の犬というイメージが常にジャコメッティの頭にあったとかで、それを形にしたもののようです。記憶からつくったようですが、ジャコメッティはこの犬を横から見て記憶にとどめたんだろうなという感じの作品です。

 

それに対して、は完全に前から見たんだろうという気がします。これは彼の弟が飼っていた猫で、ジャコメッティが朝起きるころによく来たとか。真っ直ぐ彼のほうへ向かって歩いてきた場面のイメージが強く残ったのでしょう。体に関しては全く気にかけていないかのようにひたすら細くて、ちょっと笑ってしまいました。

 

最後に、展示についてですが、見るほうが気を配りたくなるぐらい、とにかくむき出しでした。半分以上の作品にガラスケースも柵もなかったんじゃないかな。「これ以上は近づかないでね」とか「触らないでね」といった表示も目につかなった気がします。ブロンズだから、多少うっかり触られちゃっても大丈夫ということなんでしょうか。そんなわけないですよね。

何はともあれ、ガラスケースに阻まれることなく貴重な作品をとても近くでじっくり見ることができて、かなり堪能しました。豊田市美術館の学芸さんの腕前と胆力に感謝です。

個人的な感想ですが、私、豊田市美術館の2階と3階をつなぐ階段を含む天井の高い部屋がかなり好きです。あの部屋にどんな展示がしてあるんだろうと、毎回楽しみにしています。階段の上からと会場の中とで、二度楽しめるからです。コンサート会場でいうアリーナと2階席の両方から見れちゃうみたいな感じでしょうか。

前回の奈良美智展の展示(参考:豊田市美術館「奈良美智 for better or worse」展)でも、あの部屋の趣向がすばらしかったんですが、今回はそこに展示してある作品がほぼ写真OKになっていて、たまたまiPadを持って入っていたので、写真をたくさん撮ることができました。

豊田市美術館の近くに茶室があって、そこで気軽にお茶が飲めると聞いたので、今度行く機会があればトライしてみようと思っているところです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする