「北斎 だるせん!」展

こんにちは、コジです。名古屋市博物館で開催中の「北斎 だるせん!」展を見に行ってきました。

北斎と名古屋?

皆さん、葛飾北斎が名古屋に一時期滞在していたことを知っていますか。私は全然知りませんでした。

北斎は1760年に生まれて1849年没という当時にしては長い人生を送ったわけですが、50代後半のころ名古屋に2回来て、半年ほど滞在したそうです。

そのとき北斎が住んでいたのが、現在の中区栄で、ラシックのあたりと、そこから少し伏見のほうへ歩いた名古屋コミュニケーションアート専門学校のあたりだったとか。200年前、自分が今ちょくちょく通る場所に北斎先生が住んでいたなんて、何だかびっくりです。

「だるせん」とは?

ところで、この展覧会のタイトルにもなっている「だるせん」って何だろうと思われましたでしょうか。

実は北斎は、名古屋にいたころ、縦18メートルもの大きなだるまを即興で描くというパフォーマンスをしたんですね。それが余りにも盛況で、北斎の人気がぐっと高まり、みんなに「だるませんせい」、略して「だるせん」と呼ばれたんだそうです。

名古屋には、いわゆる北斎をプロデュースしてもうけようというフィクサーのような人がいて、その人がイベントの企画やら宣伝やらをして盛り上げたみたいです。

さらに、そのとき実際にどうやったのか、その詳しい記録も残っていました。どんな道具を使い、どんなしつらえで、どんなふうに実施したのかというようなことです。

それがわかっているのなら名古屋で再現してみようということで、名古屋市博物館では、この展覧会に合わせて西別院(本願寺名古屋別院)にて「北斎×西別院 ~北斎の大だるまがよみがえる~」というイベントを開いたそうです。

私が行ったときにはもう完成品は展示されていませんでしたが、途中で雨が降ってきたりしながらも無事大きなだるまが描きあがったようです。写真は見ましたが、実物が見られなくて残念でした。

北斎漫画

私、「北斎漫画」が名古屋で誕生したことも知りませんでした。

「漫画」とはいっても、現在のものとはちょっと違っていて、いわゆる絵の手本集のようなものです。ただ、ものすごい量で、人物、動物、植物、妖怪の類、風景、静物はもとより、人物一つをとっても、顔の表情から手の細かい動きから姿勢から、本当にさまざまな絵がさまざまな方向から描かれています。4,000もの図があるのだそうです。

何というか、今の絵画や漫画の表現方法のアイデアは、その大半がここででき上がっているのではないかという気すらしました。実際、北斎の絵がヨーロッパの芸術にも影響を与えていることはよく知られています。

北斎は、自分が絵を描くために生まれてきたのだとわかっていて、その人生のすべてを絵を描くことと絵について考えることに費やしたのではないかという気がします。ほかのことはどうでもよかったのでしょう。お金にも、服にも、食べ物にも、住むところにも頓着せず、他人とうまくつき合っていくというようなことにも一切構わなかったと言われていますが、そうでなければこれだけの量と質の絵は描けなかっただろうと思います。

破天荒で周りはさぞかし振り回されたでしょうが、自己流を貫き、ひたすら自分の天職を全うするなんて、ちょっとうらやましい生き方です。

北斎の捉え方が変わった

この展覧会は名古屋市博物館の企画のようですが、地域色豊かでユーモアあふれる展示方法により、作品や作家との距離が大変近く感じられ、世界的に著名な芸術家としてだけ捉えていた葛飾北斎の印象が、秀でてエネルギッシュな一浮世絵師、進化をとめずに新しいことを探求し続ける大御所の人気漫画家といった感じに変わりました。

近くにいたら絶対に大変で、かなり困った人でしょうが、私は基本的に「才能ある変人」とされる人には好感を持つタイプなので、北斎先生も好きな部類だろうなという気がしています。

余談ですが、帰り際にお手洗いを借りたところ、トイレのドアの内側にさりげなくこんなシールが!

思わず笑ってしまいながら、この展覧会への名古屋市博物館の学芸員さんの愛を感じました。展示の随所に鑑賞者が楽しくなるような仕掛けが施されていて、美術館でなく“博物館”の楽しさを感じる展覧会でした。

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