「速記」って実はおもしろいんです

こんにちは、コジです。今日は満を持して本業のお話をば。

前にもどこかで書いたような気はしますが、実はコジは速記士をしています。「へ? 速記なんてオワコンでしょ。大体聞いたことないし~」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。周りに速記士がいる方も少ないのではないかと思います。

そうなんです。私としても、「速記のことなんて記事にしてもおもしろくないよね~。誰も興味ないよね~」と思って、このブログを書き始めてからずっと、我が本業については記事にせず今に至るのですが、やっぱ私、ちょっと速記のことを皆さんに知ってほしいなって突然思ったんです。

それで、今日はちょっとだけ、速記ってこんなものなんだよって紹介したいなと。おつき合いいただけたら幸いです。

広辞苑曰く……

まずは、そもそも速記って何じゃらほいという話です。

広辞苑第七版で調べると、最初に「すばやく記すこと。特に、速記術で記すこと」と書いてあります。

でもって、速記術って何かしらって思ってると、その後ろに「普通の文字と異なる符号によって談話・演説などをすばやく書き取り、のちに普通の文字に書き直す技術」と書かれていました。

パソコンのような機械で速記する場合もあるので、実は手で書くばかりではないんですが、よく「ミミズの這ったような」と言われる特殊な符号で話し言葉そのままを写し取るツールと考えていただいたらいいのかなと思います。

この特殊な符号というのは、後ほど、幾つもある中から、私が使っているものをお披露目いたしますね~。

速記の起源は?

じゃあ、速記はいつ始まったと思いますか?

これが何と、古代ギリシア・ローマにまでさかのぼると言われているんです。細かい事例は省きますが、文字ができて結構すぐに、それを速く書きたいと思う人が出てきたんですね~。何だかびっくり。

速記は古代ローマでは知的奴隷の仕事だったんだそうで、満足な記録ができなかったら罰として指を切られるとか、思い出せなかった速記の略字を額に焼きつけらるとか、速記を禁止された演説を速記した者は右手を切り落とされるとか、そんなことがおこなわれていたみたい。

ひょえー、怖いです~。現代の日本の速記士でよかったー。

日本の速記の始まり

日本ではいつ速記が始まったかといいますと、1882年だったそうです。古代ギリシャ・ローマと比べると随分最近のことなんですね。田鎖綱紀さんという方が速記の講習会を開いたときが最初と言われています。

田鎖さんは、海外の事例を参考にしながら日本語の速記を考えて、その方法の指導を始めたんですが、いかんせん探り探りの状態だったようで、生徒さんたちと一緒に工夫を重ね、かなり苦労しながら実用化したとのこと。

その後、先人たちの努力の甲斐あって、速記がいろんな場面で使われるようになりました。今ではほとんど消えた使用法とはいえ、当時は録音技術がなかったので、この特殊技能がかなり重宝されたんですね。

例えば、

講談や落語の速記がおこなわれ、軽い読み物として出版されて流行した。

・議会関連では、先進国では珍しく第1回帝国議会から速記録が残っている。

・対談や座談会の速記録が雑誌に掲載され、大人気。

・電話の声を速記で書き取り、戦時は海外での戦況などが、また、株価や野球の試合などの最新情報が報道された。

裁判の発言記録を速記し、きちんと一言一句残せるようになった。

今でも時々、国会のテレビ中継を見ていると、演壇のすぐ下に座ってせっせと何か書いている人たちが映るでしょう? あれがいわゆる速記士さんです。

日本語って難しい

話し言葉を特殊な速記符号で書き取るのも一技能なんですが、実は、それを日本語の文章に直すことも同じぐらい技術が必要とされます。

速記で書いた原文から普通の日本語に直すことを「反訳(はんやく)」というんですが、速記符号はをあらわしているだけなので、いわば平仮名がずっと続く感じなんですね。

例えば、上の段落を速記文字で書くと、こんなふう↓になる、みたいな感覚です。

「そつきてかいたけんふんからふつうのにほんこになおすことをはんやくというんてすかこのそつきふこうはおとをあらわしているたけなのていわはひらかなかすつとつつくかんしなんてすね」

「読みづらっ!」でしょ? これを、ところどころ小さい文字にしたり濁点をつけたりしながら解読し、漢字仮名混じりで句読点もつけて普通に読めるようにしようと思うと、結構大変なんです。同音異語に注意する必要もあります。

しかも、全く同じ符号に全然違う読み方が幾つかあったりするので、前後の文脈で読み分けないといけないということもあります。自分で考えて省略している文字もあるので、同じ方式で習っても、他人の書いたものは読めないことも多いんですよ。

で、速記符号ってどんなものなの?

速記符号にはいろいろな方式があります。衆議院参議院でも違うし、ほかにも早稲田式中根式など、本当にいろいろあるんですね。

そのうち私が学んだのは「日速研式」というものです。

まず、下の図の基本文字を徹底的に覚えます。基本は50音で、例えば「ア」は、5㎜ぐらいの長さで、下に少し湾曲した線であらわします。ニッコリした口みたいな感じですね。「カ」は、その倍の10㎜ぐらいで、横に真っすぐの線です。「ク」はその倍で、20㎜の横線です。

(小さくしか見えなかったらごめんなさい。拡大して見てみてくださいね。)

それから、次の三つの約束を覚えます。

・濁音は同じ文字で読み分ける

・撥音「ン」は前字の最後を右上に少しはねる

・詰音「ッ」は前字中央に後字頭を少し交差させる

あとは50音ベースの基本文字を、3つの約束のもとに、ただただつなげていくだけです。ここまで習うと、下の速記文例の「基本」の書き方ができるようになります。「反訳」の日本語を基本文字で書いています。

さらにどんどん省略法を覚えていくと、最後には「高等」のように線の数と上下の振り幅を減らして素早く書けるようになるんですね~。ここまで書けるとプロに近づきます。

高等の方法で書こうと思うと結構覚えることも多くて大変なんですが、基本ならすぐ書けそうでしょ?

あなたにも簡単に書けます!

ええ、できるんです! マジ余裕で書けます

しかも、この「基本」の状態で、日常でも結構便利に使えると思うんですよね。

例えば、皆さん、ネット通販やら何やらで、IDやパスワードが鬼のように増えていませんか?

そういうものを安全に管理したくても、データをそのまま打ち込んで保存するのは論外だし、写真に撮ってクラウドに入れることすら危なそう。そんなとき、速記符号を使えば、あなた自身にしか読めません!!

はたまた、彼女(彼氏)と内緒で連絡をとりたい方、いませんか?

そんなときも、速記符号なら安心です。当人たちしか読めません。しかも、当人たちですら、上達してお互いの書き方の癖を覚えるまで、しばらくは読めないかも(汗)。その読めない感じも、甘酸っぱくていいなぁと思うのは私だけでしょうか。

それから、家族や周りの人間に不意に読まれたくはないが、それでもワーッと何かをどこかに書きたい方、いませんか?

昨今、新月や満月によせて願いを書いたり、自分の心の内を整理するために書き留めたりといったことがセラピーやらワークやらでされるようですが、そんなノートをうっかり人に読まれたくないなと思ったら、速記符号で書くのが最適です。まず読めません! 何なら、1年もたつと自分でも読めなくなったりします。(随分たってから必死で解読するのも、またそれはそれでいいのではないかと……)

速記という技術が消えそうになっている今だからこそ、誰にも読めない文字というのは、密かに使える機会が増えているんじゃないでしょうか。

そんなニーズがどのぐらいあるのか、実際のところは私にもわかりませんが、ともかく私自身がパスワード管理でかなり便利に速記符号を使っているので、皆さんもどうかなと思った次第です。

とはいえ、これだけではなかなか書き方がわからないし、とっかかりにくいと思いますので、今、速記の書き方のイロハみたいなものをYouTubeで提供できればと考えています

機械操作への苦手意識からか、いまひとつちゃっちゃと進められずにいますが、このブログで順番にアップする感じにしようかなと検討しています。つたない動画になること間違いなしですが、文字フェチのアホな動画をゆるゆると笑って見ていただけたら嬉しいなぁと妄想中です。

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