水谷一子 ワイヤーアート展「妍(けん)」:線の向こうに無限の世界が広がる

こんにちは、いつも美に癒されて幸せ気分のコジです。

名古屋出身の水谷一子(みずたに・はじめこ)さんの個展「妍(けん)」が、名古屋市中区栄にあるハートフィールドギャラリーで開催中とのお知らせをいただき、見に行ってきました!

    

[2017年8月24日~9月10日 open 12:00-18:00(月・火・水は休廊)]

水谷一子さんの作品の魅力

私が初めて彼女の作品を見たのは、2016年1~2月に名古屋市美術館で開催された「ポジション2016 アートとクラフトの蜜月」という展覧会でした。

何人かの作家さんが出展されている中、彼女だけが、さりげなく自分の展示室にいて、見に来た人たちと触れ合っていました。

美術館での展示で作家ご本人と話せたのも大きな驚きでしたが、ライティングによって壁に映し出される影にもその作品の魅力があらわれることを知り、もっと驚きました。

ワイヤーでできた本体だけにとどまらず、展示したとき壁にできる影も魅力的ですし、さらに、一子さんがハンディライトを当てて動かすと、それによってできる影が全く違う表情を見せてくれたんです。

これから今回の作品の中の何点かをご紹介しますが、本当は実物を見ていただかないと、彼女の作品のよさを真につかんでいただけないんじゃないかという気がします。大体、私の写真の腕前がいまひとつなので、きちんと伝わるか、不安も残りつつの紹介です(汗)。

強い線が加わった!

2016年、私が最初に見た時点の作品では、一子さんはこういう太い線を一切使っておられませんでした。髪の流れでもあり、風の流れでもあるように見えます。

特に右側の女性は、顔の前方に強い線を大胆に配置。せっかくの顔が隠れちゃっていいのかと思いきや、この線がまさに「完璧!」って感じなんです。エアリーでとても素敵です。

今回は女性がいっぱい

そして、今までは男性をモチーフにしている作品が多かったように思うんですが、今回の展覧会は女性ばかりでした。一子さんのつくる男性もみんな素敵なんですが、女性もみんな魅力的。それぞれみんな違う表情です。年齢も、眼の色も、さまざまです。

今回も会場におられた一子さんと少しおしゃべりできたんですが、針金が少しずれただけで全く違う顔になってしまうそうで、作品を搬入してから調整するのだとおっしゃっていました。

この女性たち、一番上の案内葉書に使われている顔に枠がついているんですが、実はこの線が顔の輪郭じゃないらしいんです。よーく見てみてください。あごのところでキュッとなっていますよね。イスラムの女性たちが頭を布で覆って頭髪を隠しているようなイメージです。

言われてみれば確かにそうで、顔の輪郭にしては、ちょっとパーツとのバランスがおかしいものがあるんです。じっと見ていると、そのうち、頭髪を布で隠すヒジャブをかぶっている程度じゃなく、体全体を覆い隠して顔だけ出すチャドルのようなものをみんなが着ていて、顔の部分以外は壁が全部黒い布みたいに見えてきました。

そうなんです。一子さんの作品は妄想が楽しい!!

1本の線から三次元の空間へと広がり、そこから見る人の想像が無限に広がっていく、そういう作品だと私は思っています。

猫!猫!猫!

そして、一子さんの展覧会に欠かせない(?)のが猫たち

こういうニャンコが、あっと驚く場所にいるんです。今回は3匹いましたが、そのうち1匹は私たちが行ったまさにその日に設置されたとのこと

これも、限りなく省略した線でなぜここまでいろんな表情が出せるのか、本当に不思議です。いつかうちにも1匹欲しいなと、密かに狙っております。

その省略の美しさ

針金というのは、ちょっと押したらすぐに形が変わってしまう、一期一会の素材です。なるべく安定した形にしようとすると、針金を太くしたり、数を増やしたりして、強度を上げたくなってしまうんじゃないかと思います。

でも、一子さんの作品は、あくまでも最小限の線でつくられていて、あとは潔く見る人のセンスに任せています。そういったところも、省略の美を好む日本人の美意識に響く作品なのではないかと感じています。

水谷一子さん、どこまでも気になるアーティストです。「はじめこ」さんというその名前からして、かなり気になりませんか?

この作品↑は、まだ試作的につくったもので、手探り中なんだそうです。どんな姿にでき上がっていくんでしょうね~。そういえば、この作品には壁に映る影がありませんが、自分がガラスに映り込むから、それが楽しいのかな。そう考えると、鏡に映すパターンも見たことない気がします。

個展開催をこまめにチェックし、またぜひ逃さず伺いたいと思っています。

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